建設用語小辞典

舗装現場用語集

舗装現場用語について

どの業界でも、その業界の人だけに分かる言葉があり、また、その現場では現場の人にだけ分かる言葉があります。舗装の現場もその例外ではありません。そのような言葉は、普通の言葉で言おうとすると、長ったらしくなったり、明確でないといった理由で発生するのだろうと思います。別に新顔を困らせるためのものではないのだけど、新人、部外者は言葉の理解に戸惑うこともよくあります。そんな場合に、生半可に分かったような振りをしていると、とんでもない過ちを犯したり、危険を生じたりすることがあります。

それでは、新人にそういう言葉を教えておけばいいではないか?という意見も当然のごとくあります。それに対して、現場の労務者からそのような言葉の意味を聞くことにより、コミュニケーションが取れるのだという説もあります。要は知ったかぶりの生意気な態度をとらないということでしょう。

ここには、雑誌「道路建設」1999年6月号で取り上げられた「現場用語と舗装」を参考にして、一般土木用語も含めて取り上げて見ました。作者の勝手な想像、推論が入っており、内容の正しさについては責任を持たないことを付記します。

最近、丸善出版サービスセンターから出ている、福本悟美 著「建設現場の子守唄」という本に面白いのがあると、くれた人があり、そこから重複を省いて収録しました。実は舗装、土木、建築も現場で使っている言葉は同じようなものなのです。

ところで、お隣の韓国ですが、建設現場に日本語が乱舞して問題になっているようです。「建設会社に就職した新入社員や日雇い労働者は、仕事の指示が聞き取れず、意思の疎通もできないため、現場で使用されている日本式用語を覚えるほかないという悪循環が続いている」ということで、「建設用語を韓国語に運動」を展開し、『韓国語建設用語集』を作って頒布しているようです。

現場用語の良し悪しについて

現場用語は関係者の仲間うちで、仕事の最中に短い言葉で確実に指示ができるという意味で、有用なものです。しかし、部外者から見ると、わけの分からない言葉を使って、容易によそ者を近づけないようにする隠語、符牒の類とも受け取れることがあります。こうしたことから、そのような現場用語を使う人を世間で白眼視したりするということも出てきます。目を転じて、コンピュータや広告業界を見ると、わけの分からないカタカナ言葉が氾濫していて、これについては批判はあるものの、人々は割合に寛容であるように思われます。日本語、それも方言由来の用語は世間から差別される嫌いがあるようです。

土木関係の現場用語で困るのは、それが方言と結びついていて、どこでも通用しないことがあるということ、現場にあまり接しない技術者には意味不明であったりすることでしょう。広く見ると関係者の仲間うちでも理解の妨げになることが無きにしもあらずということでしょう。長ったらしくならなければ、誰にでも分かる言葉を使うようにするのがいいでしょう。

現場用語の生い立ち

現場用語はどのようにして出来てくるのだろうか?

一つは"おふざけ"でしょう。何であれ、食べ物など親しみのあるものを連想させるものをそういう名前で呼ぶと、面白く、それを知っている人には"ぴん"とくるというわけです。コンクリートの豆板がそのいい例でしょう。この類がいちばん多いようです。はめ込んだりするものはどうしてもセクハラみたいなのが多くなるようです。

次に多いのが外来のカタカタ言葉とそれが訛ったものでしょう。時には外人に教わって勘違いした結果というのもあるようです。ブリキはbrick つまりレンガのはずが、たまたま、レンガをブリキで覆ってあったのを「何だ?」と訊ねたらbrickという答えが返ってきたのがブリキの語源だというのは有名な話です。これに訛りが加わるわけですが、これは意外と、なまじ学のない人が正確に聞き取った結果ということもあるかも知れません。シャコというのはワイヤロープに他のものを取りつけるときに使う金具で、shuckleなのですが、なまじ学があるとシャックルと呼んでしまいますが、実際にはシャックウというようにしか聞こえません。多分、シャコの方が原音に近いのだろうと思います。最近はワンダフルと言わずにワンダホーと言うのが原音に近くてカッコイイとされているようですが、それと同じ伝でしょう。アンビリバボーとかもありますね。学校では今、どう教えているのでしょうか? 実用的な発音が正しい発音とは限らないかも知れません。徳川幕府の海軍や日本海軍が英米の指導で形成されたこともあって、聞き取ったままに用語になったのが棒心、ゴーヘイ、ゴスタンなどとあるようです。

次は方言です。土木工事は出稼ぎの人に頼るという面がありますが、人数で支配的な出身地の人の方言が現場で使われ、よそ者はこの世界ではそういうのかと思って受け入れるというものです。この方言ですが、実は由緒正しい古い言葉だったりします。例えばよきは斧(おの)斧のことでトンネル工事でよく使われる言葉ですが、かつては九州地方の標準語でした。これを広辞苑で見ると、「斧の小形のもの。和名抄」とあります。

こうした生い立ちの言葉がいりまじって、豆板のようにさまざまな呼び方がでてきます。

専門用語というのがありますが、これも考えてみれば、学のある専門家が書物、会議などの現場で使う現場用語でしよう。ファッション業界、コンピュータ業界で使われる用語はカッコいい現場用語ということでしょう。

ページトップへ戻る